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・・・馬鹿馬鹿しいな
俺は絶対信じない

あら、そんなに強調するのは信じてる証拠よ
本当は怖いんじゃない?

俺は君と違って、自分の目で見たことしか
信じられないんだよ・・・
むしろ、そんなものを怖がることのできる君が羨ましいな
君は怖がることを楽しんでいるようだしな

ふふっ、どうしてそう思うの?

怖い話を聞いて震えている時の君が
一番魅力的だからさ・・・
そんな君が見たくて、わざわざこんな真夜中についてきたんだろ・・・

・・・?
何かおかしいな・・・

どうしたの?急に・・・

今のセリフ、さっきも言ったような気がしたんだがな・・・

さあ・・・?覚えてないわ
ところで、あなた本当にこの土地の言い伝えを信じてないの?

・・・ああ。ここのように昔処刑場があったような場所だと、
何かしら迷信が付き纏っているものだろ・・・
大抵はインチキに決まっているさ

そうでもないわ
これはこの近所で最近あった事なんだけど・・・


『まだ若い駐在さんが、定時のパトロールに出たっきりいつまで経っても帰ってこないの』

『同僚の人が心配して、この祠の辺りまで来てみるとそこには・・・』

『例の駐在さんが、放心したように同じ場所をぐるぐるぐるぐる歩いていたというわけ』


後で調べてみたら、半径20メートルほどの
弧を描いて堂々巡りをしていたらしいわ

ほ、本人はどういうつもりだったんだ・・・?

本人は、署に帰ろうと必死だったというの でもいくら歩いても、元の道に戻ってしまう・・・
もし誰も来なかったら、永遠に歩き続けていたでしょうね

きっと、これは狐の仕業よ

なに、狐だって?

実は、同じような例が古い文献に残っているの
狐に取り憑かれた旅人は、片足が何寸か短くなってしまう・・・
そのため、本人はまっすぐ歩いているつもりでも弧を描いて歩くことになるの

ははは、コンパスみたいなものか
君は本気でそんな話を信じているのか?

不思議な事ならまだあるわ
この近くの分校に座敷わらしが出るのよ

なに、座敷わらしだって?


『分校の朝礼で、数の少ない生徒達の点呼をしていたの』

『生徒の数が、一人増えている・・・』

『よけいなものが、混じっている・・・』


・・・その一人が、座敷わらしというわけだ
不思議な話ならもっとあるだろ・・・

・・・もう飽きてきたわ

・・・例えば、真夜中に男と女が二人きりで話をしてるんだ
辺りには、誰もいない
それなのに、いつの間にか会話の中に何か別のモノが入り込んでいる・・・
そんな状況なのに、二人は気が付かない

嫌な話ね・・・気持ち悪いわ

しかも二人はいつの間にか、中身を摩り替えられている・・・

それも狐や座敷わらしのせいだっていうの?
・・・馬鹿馬鹿しいわ
私は絶対信じない

おや、そんなに強調するのは信じている証拠だろ
本当は怖いんじゃないのか?

私はあなたと違って、自分の目で見たことしか信じられないのよ・・・
むしろ、そんなものを怖がることのできるあなたが羨ましいわ
あなたは怖がることを楽しんでいるようだものね

・・・どうしてそう思うんだ?

怖い話を聞いて震えている時のあなたが一番魅力的だからよ
そんなあなたが見たくて、わざわざ
こんな真夜中に・・・

・・・あら?変ね・・・
今のセリフ、さっきも言ったような気がするんだけど・・・











出典:井上雅彦 『よけいなものが』

小説はやばいらしい

コメント

Secret


久しぶりに読み物の楽しさを感じた。

これは面白いな・・・
いつの間にか狐と座敷わらし・・・か

すごいなこれ

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